首輪物語
普段はできるだけ気をつけているのですが、たまに、ついうっかり人の目を意識してしまって途端何もできなる、なんてことがあります。何も。ただただ寝っ転がって空間を見つめるだけ。
人の視線そのものが怖い訳ではないと思います。
空想の中で作り上げた他人の思考や評価に自分を合わせようとしてしまう事が怖いのです。
誰かに合わせようとして自分を失う事への拒否反応。
ひたすら純粋だった子供の頃、真面目で大人の言うことをよく聞いていい成績を取ることが何よりも大切なんだ、と思っていました。なのでいつでも良い子であろうとしました。全ての基準が大人。もしくは常識とか社会規範みたいなふわふわした大人的な何か。
だから周りに友達だけの時と大人がいる時の人格?性格?がちょっと違うんです。大人がいると良い子を演じてしまう。それでそのギャップに混乱します。それにだんだん優等生な意識が侵食して来て、誰も見ていないのにいつの間にか自分に首輪をつけ始めました。
最初は良いことだと思って頑張って優等生していたのに、気づけば役に飲み込まれて抜け出せなくなっていた。そんな自己矛盾への気持ち悪さで友達の前でも一人でいても苦しくなってくるんです。そしてだんだん消極的に。最初は遠くの世界が見えていてもリードの範囲しか動けないので諦めて狭い小屋の中でじっとしているようになります。
結果真綿で首を絞められるようにゆっくり息ができなくなって遂には窒息。
首輪をひきちぎるまでハム太郎の寿命以上はかかりました。
それでも未だに首輪を超速再生してしまいそうになるんです。そんなときに拒否反応が出ます。
もう二度と出木杉なんかに囚われたくない、俺だって劇場版で男前なジャイアンを拝みたい。
そんなこんなでタートルネックは着ません。特に黒は。