トイレの死神様

哺乳類にとって排便時は睡眠や食事と並んで無防備なので絶対に敵に知られてはならない筈である。なのに人間はトイレを作った。皆そこでは無防備になることが確定している。(一部食事や喫煙、リンチまたは商取引をする人もいる)

こんなことではトイレに入る＝襲ってくれと同義ではないか。奇襲し放題ではないか。これが平和ボケか。いつから他の人間が味方だと錯覚していた。

そんな人間をあざけるように発生した最も罰せられるべきイタズラが少便器で用を足している最中の人間の肩を抱きウェ～イ！するヤツ。平和に慣れ親しんだ豚を襲うとは小学生男子なんと卑劣で狡猾なり。

このイタズラは防止策を講じ辛い。

個室を利用すれば防ぐ事が可能なのだが個室に入ることもまたリスクなのだ。個室に入る＝うんこであり、何故か小学生にとってそれは末代までの恥。バレればその日うんこと呼ばれなければならない。個室の外からうんこくさい、とひたすら連呼される事もある。

こうなったら小便をしないぞ！としたいところだが１日水分を取らないなんてキツイし、給食の牛乳を飲まないなどもってのほかなので不可能。さらに小便は１日１回では済まないので警戒レベルを常に保つのが難しい。

成功率の高さ、被害の甚大さも尋常じゃない。

どんなに警戒しようと最中は両手は塞がり後ろは振り向けない、さらに一歩も動けないので標的としてはチョロすぎる。

具体的な被害としてはまず小便を撒き散らしてしまうことだ。トイレ中に小水が飛び散る。

よってこれを掃除しなければならない、一人で。決して教師含めた他人に言うわけにはいかない。尊厳の問題だ。

だが学校のトイレは私立でない限り汚物の象徴のようなもので大変な苦痛を伴う。掃除をすれば女神が美形にしてくれるとかだったら話は別だがそんなことにはならない。アンモニア臭くなるだけだ。

さらに精神的被害も伴う。

小水がアレから出ているまさにそれを見られることだ。本来入院でもしない限り絶対に見られないであろう"放尿"を見られる苦痛と言ったら全裸に靴下の比ではない。

何より辛いのは同じやり返しができない。

こちらにはモラルというものがある。

いくら憎しみが膨れ上がったからと言って他人の小便で公共施設を汚すことなど常人に出来ようはずがない。モラルが崩壊している、もしくは進んで捨てる事のできるニンゲンの特権なのだ。もはや死神の所業である。

いつか痛い目見させてやるからな、高倉ァ！