股の狭間に見たナニとビンタ
これは事実である。
中学校3年の時の話 、2014、15あたり。
名前は全て仮名を使う。
サッカー部だった俺はその日割とマジメナ試合で他校に遠征に来ていた。チャリで20分くらいの学校に。
確かその日は3年だけで人数は15人程。
予定は2試合で9時と15時。
この膨大な空き時間が全て行けなかったのだ。
試合結果はさっぱり覚えていないが、一試合目が終わった後はいつも通り自由時間だった。
体力を削らないで決して騒がずに携帯も使わずにいればOKなのだ。
俺達はひたすら喋っていた。
こういう時間はとにかく楽しい。
スマホを持っていなかった俺はスマホ禁止で遊べる環境がありがたかった。
もちろん何を話したかなんて一切覚えていないが楽しかった確信はある。
事件は平和な日曜の昼食後に起きた
人を弄るのが大好きな山本がコソコソ何かを触れ回っている。
俺の所にもやってきて奴は言った。
「おい、田中を見てみろ」
すぐさま目をやった俺は見てしまった。
2m前方に砕けた体育座りをする田中がいた。
そして彼の短パンのあの垂れ下がった間に見えた。
田中のナニが、
かなり生々しいナニが見えていた、いやこちらを覗いていたのだ。
猫を被らず堂々と己の姿を誇示していた。
俺はあまりにナニが主張してくるのでかなり引いた。
だが周りの奴らは気づいた者から順に吹き出し始める。俺も笑う。
言っておきたいのは田中のナニが変だからとかで笑ったのではなく、丸見えなのに気づいていないアホ具合に笑ったのである。
さすがに田中も自分が笑われていることを認識しいじられキャラらしく振る舞った。
奴の「やめろよぉ」は何度聞いたか知れない。
ここまでは良くある風景だった。
どこかというより全てが抜けている田中がいじられるのはいつも通り。
しかしこの日は違った。
田中が顧問にチクったのだ。
もはやチクる方が恥ずかしいだろというか何て伝えるんだ?しかも伝えた所で笑い話だろ、と俺達はたかをくくっていた。
顧問がこちらへ来て言った。
「田中の事を笑った奴、来い」
わざとドスを聞かせたような声だった。
リンリンランランソーセージと頭の中で流れていたが俺は正直者ではないので黙っていた。
ただ何人か馬鹿正直な奴と予め田中から聞いていたのか顧問の独断と偏見で選ばれたのかはわからないが山本を含めた数人が呼ばれた。(ちなみに俺はお気に入り)
計7人。
奴らは俺達の休憩スペースとは10mくらい離れた場所に横一列に並ばされていた。
顧問はこちらに背を向けていて表情は読み取れないが。7人の顔かはこちらから丸見え。
俺ともう二人、難を逃れた山崎と柴田はニタニタしながらそれを見守っていた。
顧問は問う
「お前ら田中に何をしたかわかってんのか」
7人が笑いを堪えていた。
誰も答えなかった(正確には吹き出しそうで誰も答えられなかったのだが)ので顧問は声を張り上げて言った。
「何をしたか言え!」
何故か左端の斎藤だけを睨みながら。
(斎藤は顧問に嫌われている)
斎藤が言った
「た、田中のチ○コを見てわらいました」
6人の顔がしかめっ面になる。
俺達は大爆笑。
どうやら顧問はガチギレのようだ。
ここからは顧問のやらかしなのだが、
熱血ぶりたかったのか、言ってしまった。
「今から一人ずつビンタする」
まるでスクールウォーズである。
他校のど真ん中で他校の教師生徒の目があるなかコイツは馬鹿か?と思ったが顧問はお構い無しだ。スマホさえあれば撮影してTwitterに晒したのに…
左端の斎藤の前に顧問が立った。
そして小さい声で「お前わかってんのか?」とかボソボソ言いながら斎藤の胸を執拗に突く。え?ビンタだけじゃ…?
自分の発言を忘れたのか顧問は斎藤に突き、ビンタ突き、ビンタを4、5回した。
ほとんど享楽に見えたが。
斎藤が終わると残り6人を順々にビンタしていった。
ビンタ一発のみだった。
しかも斎藤とは威力が違う気がしたが。
さすがにもう笑えなかった。
今すぐ訴えてやりたかったがその後しばらく殴られたメンバーやその親から声が上がる事はなかった。
たぶん誰も親に話さなかったのだろう。
俺はむちゃくちゃ喋ったが。
ただ親と話して、直接被害にあった奴らが何も言わないのであればこちらも言えないという結論に至った。
半年後、斎藤の親がようやく気づいて学校に訴えた、が、顧問は教頭と共に各家庭に謝罪に行って終わったらしい。
田中のナニがここまで事を大きくするとは誰も思っていなかった。
ナニは大きかったが。