勝手に改葬

来世で立派なメジャーリーガーストライカーになるために。

エバラはかけすぎぐらいが丁度良い

この気温のなか5㌔近く歩いたからか疲れていた。

疲れていたんだ。

 

 

夕方6時、帰宅

途端母に「今日、お寿司食べたくない?」と聞かれた。

何かと思えば昼に漁港で自分たちだけ(両親&長女)寿司を食ってきたからこちら(長男&次女)に埋め合わせとして夕飯を寿司を買ってくるというのだ。

 

スーパーで。

 

ちょっと待て。

君達が食ったのは三浦だろ神奈川の前足だろ。

つまりは

ガチモンの、俺が生まれてこの方一度も経験のないカウンターのそれじゃねぇか。

でも母の顔から察するに、"母に関しては"

どうやら罪悪感に駆られているようだった。 

なのでこちらとしても押しが弱くなってしまった。控えめに、寿司より肉がいい、7~800円するくせしてスーパーの飯が堅くてネタが生臭い発泡スチなら、肉がいい。

やっすい豚を焼き肉のタレで焼くだけでいい。暖かい飯がいい。

控えめに伝えた。

 

控えめだったそれは母の罪悪感を上回るには至らなかった。

夕食の席に付くとこちらには寿司とアクアパッツァ、あちらにはアクアパッツァとパスタ。

ぞっぢがいい。

 

だが考え直せ。寿司なんて贅沢品だ。

そんな物を食えるなんて幸せじゃないか。

1円も稼いでない人間が寿司を頂ける、感謝こそすれ怨む所など1つもない。

俺は清々しい心持ちを取り戻し、おててのシワとしわを合わせ

「いただきます。」

イカを頬張った。

 

他と比較さえしなければ決して不味い事はない。3個で百円のグレープゼリーが好物の安舌だ、問題ない。

次にサーモンを、その瞬間だった。

 

「お寿司、おいしい?」

 

うまかねぇぇぇぇぇぇええええよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!

うまいわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!

なんだ!?マリーなのか!?アントワネットなのか!?めちゃくちゃに高くて美味い鮨食っといてその1皿分にも及ばないであろうスーパー寿司食ってる人間においしい?じゃねぇよ!!!わざとやってんのかぁぁあああ!?!?!?!?

 

 

怒りに震える身体を下手くそなカバーのサイダーCMのリズムで誤魔化し寿司を胃へと流し込む。

苛立ちでまみれた視線はスベった芸人に向けるフリをして食卓を後にした。

 

 

そして今に至る。

落ち着こう。

別に母は悪くない。

自分達だけ寿司を食べた、ただそれだけが気掛かりだったんだ。

同じように(たとえ雲泥の差がある寿司であれど)美味しい物を食べているということを確認して罪悪感を晴らしたかっただけなんだ。

ましてや相手を挑発、なんて意図は絶対にない。

こちらがしっかりと、エバラへの燃えたぎる愛を細切れへの渇きを伝えていればこうはならなかったんだ。

この怒りは母や寿司に対し失礼、本来は自分に向けるべきものなんだから。

きっと正常な判断ができていないに違いない。

今日はもう寝よう。